運動時の脂質利用を増やす
❙運動時のエネルギー
脂肪は糖質と同様に体内でエネルギーとなる。
糖質は貯蔵量が限られているが脂肪はフルマラソンを10回以上走れる量のエネルギーを溜めているが、糖質は1600~2000カロリー程度でフルマラソンを1回も走る事ができない。
その為、マラソンなどの長時間運動時はいかに脂質利用割合を増やせるかが重要となる。
【目次】
❙脂質代謝とミトコンドリア
ミトコンドリアは体内でエネルギーを生み出す働きがある。
脂肪も糖も最終的にはミトコンドリアで代謝されエネルギーになる。
ミトコンドリアを増やすことで糖の利用を節約し脂質の利用割合を増やすことができる。
❙ミトコンドリアを増やすには
ミトコンドリアはウォーキングやジョギングなど、持久的な運動をすることで増やすことができる。それ以外にも
長期的な高脂肪食でミトコンドリアを増やすことができる。
総摂取量の80%を脂質が占める高脂肪食を取ることで体内のミトコンドリアを増やすことができる。
この食事で増えるミトコンドリアは運動で増えるミトコンドリアとは種類が異なる。
ただし運動で増えるミトコンドリアは運動によりすぐに増加し始めるが、
高脂肪食によるミトコンドリアの増加は4週間程度経過の後増加が見られる。
高脂肪食によってミトコンドリアが増えることで運動パフォーマンスが向上するか
というと実際には明確なパフォーマンス向上の結果は出ていない。
運動中の脂質利用量の割合は増える事は認められている。
しかし以下の点でパフォーマンスの改善につながりにくいと考えられる。
・交感神経活動の亢進
高脂肪食と高糖質食を比較した場合、交感神経の活動が活発になり
血中アドレナリン濃度の上昇と心拍数の増大が生じ、疲労を感じやすくなる。
・解糖系酵素の抑制
高脂肪食により運動時の脂質利用量が増えるが逆に高強度運動時の糖質の利用を制限してしまう。その為素早いエネルギー供給が必要となる高強度運動時のパフォーマンスが低下してしまう。
❙ケトン体
1日の糖質摂取量を総エネルギー摂取量の5%未満もしくは20g以下まで減少させた
低糖質・高脂肪食により体内での脂質の利用量が増加する。
脂質の利用量が増えると主に肝臓でケトン体が生成される。
脂肪酸をケトン体に変換する事で体内で効率よくエネルギーにすることが出来る。
しっかりと糖質の制限が出来ていない高脂肪食では糖質の摂取により分泌される
インスリンが脂肪の分解を抑制する為、ケトン体がほとんど生成されない。
ケトン食を続けることで体内の脂質利用量が増大する事は分かっている。
体内に多くある脂質の利用量が増える事で持久系の運動での糖質の枯渇を予防出来る事が
考えられるが、現時点ではまだエビデンスが不足している状況となる。